気を取り直して

夕方研究室に行きました。とはいえ今日はあまりやる気が起きず、文献の整理をしたり、『地球外生命論争』を少し読み進めることくらいしかできませんでした。
友人の机の上に手塚治虫アドルフに告ぐ*1が置いてあったので、一気読みしました。確かはじめて読んだのは小学生のころだったはずなので15年ぶりくらいでしょうか。子供のころにはぜんぜん理解できなかったのですが、こんなに複雑でおもしろい話だったとは。神戸におけるドイツ人とユダヤ人の関係を軸に、物語は進んでいきますが、こういう視点は今読んでも非常に新鮮だし、むしろわたしたちが研究においてないがしろにしていた領域に気づかせてくれていると思います。わたし自身以前から、お雇い外国人や戦前・戦時中における在日ドイツ人のことには関心があったので、今後もう少し調べてみようという気になりました。
日本に住んでいたドイツ人が書いた本、というのは実際のところそんなに多くはないのですが、中でもわたしが気に入っているのがハンス・モーリッシュの『植物学者モーリッシュの大正日本観察記』という本です*2。この本の著者モーリッシュは帝政末期のドイツから東北大学に招聘され、植物学とりわけ微生物学について研究をしていました。しかし彼は専門の研究だけでなく、日本各地を旅行した際の日記や雑感においてさまざまな話題について、言及しています。弟子の相馬青年とのやり取りはおもしろいけど、この人の底なしの好奇心がよく伝わってきます。わたしはこの本が大変気に入ったので、わざわざドイツ語原典を読もうと、大津市の山奥*3にある京大生態学研究所の図書室まで行きました。
また世界大戦中に日本に滞在していた人の手記としては『ジョン・モリスの戦中ニッポン滞在記』*4がおもしろかったです。名前からもわかるとおりモリスはイギリス人で東大で英文学を教えていました。この本には、日本での生活のことだけでなくそれこそ『アドルフに告ぐ』にも描かれている在日外国人の―彼は敵性国人ですが―緊張した生活の様子を見ることができます。



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*1:アドルフに告ぐ(1) (手塚治虫漫画全集)

*2:

植物学者モーリッシュの大正ニッポン観察記

植物学者モーリッシュの大正ニッポン観察記

*3:京都市内からバイクで小一時間、瀬田駅からどんどん山に入った地の果てのような場所です

*4:

ジョン・モリスの戦中ニッポン滞在記

ジョン・モリスの戦中ニッポン滞在記