夕方から大学に戻り

文献探しを進める傍ら、薬師院仁志先生の『英語を学べばバカになる』*1という本を読んでました。著者は教育学者ですが、わたしたちのような非英語系外国文化を選考している人間が常々感じているさまざまな不満を、いくつもの論点からわかりやすく整理し、日本の英語偏重政策を批判しています。ただひとつ不満が残ったのは、人は必要に迫られて外国語を勉強するのか、という点です。筆者の主張の背後には、日本人の多くにとって英語など必要ないのだからわざわざ勉強する必要などない、という考え方があります。これは事実でしょう。わたし自身、自分が専門としているドイツ語など、現地に行かない限りまず役に立たないと思っています。しかしこういってしまえば、英語だけじゃなく他の外国語を勉強する必要もないし、そもそも大学の勉強などまったく不要な、欧米諸国のサルマネにすぎないもの、ということになってしまうのではないでしょうか。
わたしは中学・高校と英語が好きで、得意科目でした。アメリカに行きたいとも、アメリカ人と仲良くしたいとも思ったことは一度もありませんでしたが、陸の牢獄に閉ざされた北関東の田舎町に育ったわたしにとって、英語を音読し、英語の世界に身を浸すことは、果てのない平野からのたった一つの出口だったのだと思います。筆者は日本一の移民都市大阪の出身だから、このわたしとはだいぶ外国語に対する感じ方が違うでしょうが、わたしとおなじように、他の世界への憧れとして外国語を学ぶ人はたくさんいるはずです。いやおそらく、多くの英語ができれば何とかなると考えている人たちって、みんな日本での出口のなさから、英語に夢を抱いているだけなんじゃないか、とも思えてきます。外国語なんて必要ない、と頭ではわかっているけど、できれば日本以外の世界とつながりたい。少なくともつながれる可能性がほしい、そういった思いが外国語学習の根幹にあるような気がします。

*1:

英語を学べばバカになる グローバル思考という妄想 (光文社新書)

英語を学べばバカになる グローバル思考という妄想 (光文社新書)